商標権者の登録商標不正使用取消審判
趣旨
商標権者は登録商標と同一の商標についてその指定商品(役務)の範囲内において、独占的に登録商標を使用することができます。
また、商標権者は登録商標と同一または類似の商標であって指定商品(役務)と同一または類似の商品(役務)に使用されている商標を他人が使用することを禁止することができます。
すなわち、登録商標と同一の商標・商品(役務)については商標権者が独占的に使用することができ(いわゆる「独占権」)、登録商標と商標が同一で商品(役務)が類似している場合、登録商標と商標が類似で商品(役務)が同一の場合、登録商標と商標が類似で商品(役務)が類似している場合には商標権者は他人の使用を禁止することができます(いわゆる「禁止権」)。
禁止権の範囲において商標権者が独占的に登録商標を使用することは法文上認められていませんが、他人の使用を禁止できる結果、事実上独占的に使用できることになります。
しかし、上述したように商標権者には禁止権の範囲で登録商標を独占的に使用することが認められているわけではありませんので、商標権者が故意に禁止権の範囲における登録商標の使用であって、商品(役務)の品質の誤認や他人の業務にかかる商品(役務)との混同をしたときは、制裁としてその商標登録は取り消されるものとされています。
請求人
法文上、「何人も、その商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる」と規定されています。
要件
- 商標権者の故意による使用
上述したように商標権者は登録商標について独占権をもち、類似範囲において禁止権という他人の使用を排斥し事実上自らが独占的に使用できる権利をもっているため、故意でない使用についてまで商標の登録を取り消すのは酷であるからと考えられます。
「故意」は客観的に認定されますので、商標権者が「故意」を否定しても客観的資料によって故意の存在が認められるのであれば、「故意」による使用となります。
- 禁止権の範囲(類似範囲)における使用
独占権の範囲における使用によって誤認・混同が生じる場合はその商標は商標法第1項15号または16号の無効理由を有するため、商標登録無効審判の対象となります。
類似範囲を超えて使用によって誤認・混同が生じる場合はそもそも登録商標の使用とは関係のない使用ですから、登録商標不正使用取消審判の対象とはなりません。
- 商品の品質(役務の質)の誤認または他人の業務に係る商品(役務)と混同を生じること
登録商標の使用によって誤認等が生じることが必要であり、商標権者が単に商品(役務)の品質(質)を低下させただけでは取消の対象とはなりません。
さらに「混同」は現実的・具体的なものであることが必要とされています。
請求期間
商標権者の不正使用の事実がなくなった日から5年間経過後は請求できません。
不正使用の事実がなくなって5年も経過すればその登録商標には信頼が化体しているであろうし、無期限に取り消しうるとしては法的安定性を欠くからと考えられます。
効果
登録商標取消審決の確定により商標権はその後消滅します。制裁的規定であることから不正使用した商品(役務)についてのみ登録商標が消滅するのではなく、登録商標全体が消滅します。
審決確定後5年間はその登録商標の指定商品(役務)または類似商品(役務)について登録商標または類似商標の登録を受けることができません。
万一、審査官の過誤によって登録されても無効理由となります。