商標審決紹介3
1.審判番号:不服2010-16976
本願商標:「あも」
指定商品:「茶,菓子及びパン,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,穀物の加工品,べんとう,即席菓子のもと」(第30類)
2.原査定(審査官)の拒絶の理由の要点:
(1)本願商標「あも」は、『もち』の異称であって、
(2)本願指定商品との関係においては「もち、もち入りの商品」を表したものと認められる「あも」の文字を標準文字(要するにありふれた書体ということです(荒木))で表してなるから、
(3)商標「あも」を指定商品中「もち、もち菓子、もち入りの商品」に使用しても、本願商標に接する取引者・需要者は、単に該商品の品質を表示したものと認識するに止まり、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ない(商標法第3条第1項第3号)、
(4)「もち、もち菓子、もち入りの商品」以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがある(同法第4条第1項第16号)に該当する。」
3.審判官の判断:
(1)「あも」の文字(語)は、
「広辞苑 第六版」(株式会社岩波書店)には、「あも【餅】」の項に「(『あまい』の意という)『もち』の異称。子どもや女性が用いた語。あんも。<日葡>」の記載、
「大辞林 第三版」(株式会社三省堂)には、「あも【餅】」の項に「もち。幼児や女性が用いた。[日葡]」の記載がある。
「日葡」とは、いずれの辞書においても「日本イエズス会が長崎学林で1603年(慶長8)に刊行した日本語‐葡萄牙(ポルトガル)語の辞書。」(広辞苑)である「日葡辞書」を出典とすることを表したものである。
また、「大辞泉 増補・新装版」(凸版印刷株式会社)には、「あも【母】」の項はあるものの、「あも【餅】」の項はない。
さらに、「古語辞典第十版」(株式会社旺文社)には、「あも【餅】」の項に「(女性語・児童語)もち。=餅あんも。」の記載、「古語辞典 補訂版」(株式会社岩波書店)には、「あも【餅】」の項に「もち。あんも」の記載がある。
(2)これらのことからすれば、「あも」の文字(語)は、かつて子どもや女性に用いられた「もち」等を意味する古語であって、現在においては一般には使用されていない語であると判断するのが相当である。
(3)そして、当審において調査するも、「あも」の文字(語)が、本願の指定商品を取り扱う業界において、商品の品質等を表示するものとして使用されている事実を発見することはできず、また、本願の指定商品の取引者、需要者に商品の品質等を表示したものと認識されるというべき事情も見いだせない。
(4)なお、「日本料理語源集」(光琳社出版株式会社)には、「あも【餡餅】」の項に「大津、叶匠寿庵の名菓(「叶匠寿庵」は本願商標の出願人です(荒木))。」の記載がある。
(5)そうとすれば、本願商標は、これをその指定商品について使用しても、商品の品質等を表示したものと認識されるものではなく、自他商品識別標識としての機能を果たすものであり、かつ、商品の品質について誤認を生じさせるおそれもないものというべきである。
(6)したがって、本願商標を商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するとして本願を拒絶した原査定は妥当でない。
4.コメント:
要するに、審査段階では商標「あも」について、「あも」が「もち」の異称であるから、指定商品との関係上、単に「もち」を意味する「あも」を登録することは認められないとしています。
一方、審判段階では「あも」について、
(1)現在一般的に使用されているものではない、
(2)指定商品を取り扱う業界において「あも」が商品の品質等を表すものとして使用されている事実は見出せない、
(3)「料理語源集」には出願人の製品として「あも」が掲載されている、
ことを挙げ、商標「あも」は登録の対象となる旨の結論に至っています。
つまり、ある商品に商標「あも」が付してあっても取引者・需要者はその商品について、たとえば「もちが使用されているお菓子だな」と認識することはない、との結論に至っています。
私はおはぎ等の和菓子が大好きですが、確かに、「もち」を「あも」と書いてあるのを見たことがありませんし、誰かがそのように言っているのを聞いたこともありません。
ところで、この「あも」はとても美味しそうなお菓子です。ぜひ今度購入してみたいと思います。
(弁理士 荒木哲朗)